東京・深夜の渋谷センター街 ◎3月15日◎
センター街の様子。人通りは少なく、寂しげだ。
午前二時ごろ、渋谷へやって来た。いつもと比べると、人通りが少ない。節電のためネオンは消しつつも、営業している飲食店や居酒屋は多い。とあるカラオケ店社員の男性(25才)によると、地震当日は多くの「帰宅難民」が宿泊所代わりに入店したが、その後はさっぱり。 今日はまだ10組だけだという。それでも、歌いに来る客は歌いに来る。「バスやタクシーで帰れるお客さんは遊びに来ますね。とはいえ、カラオケ店は大打撃です。うちはこんな時でもやっています、というのがモットーでもあるのですが……。 うちはビル一棟ですが、貸店舗でやってらっしゃるところは、(テナント料も払わなければならないので)大分たいへんだと思います」
ドン・キホーテ内の売り切れの貼紙。入荷は未定だそうだ。
109の近くで客の呼び込みをしていたセラピストの女性二人は1時間ほど路上に出ているが、客が来る気配はないとのこと。「みんな、よく節電に協力しているなあって思います」ドン・キホーテやコンビニから食糧がなくなっていることに驚いたという。 センター街付近のドン・キホーテでは水や食糧に加えて毛布やティッシュ、電池、卓上コンロまで品切れが続出。入荷は未定だという。店の前では心配そうにテレビを見つめる人の姿があった。
「お気をつけてどうぞ」 西武デパートの前で道路工事をしていて、警備員が通りがかりの私にうやうやしく頭を下げてくれた。四年ほど前のこの時期、夜間工事の誘導のアルバイトをしていたことを思い出す。この寒いなか、ずっと立ち続けて歩行者を誘導してくれる彼らには、こちらの頭が下がるばかりだ。
いま、パソコンでこの記事を書きながらyoutubeをみてみると、「東北地方太平洋沖地震 渋谷からのメッセージ」という動画があがっていた。ついさっき駆けずり回ってきた渋谷で、人々がスケッチブックに書いたメッセージと共に地震の被災地を応援している。「何もできないけど」「がんばってください」「祈っています」――。
私は、彼らのあたたかな、そして純粋な気持ちを否定したくない。しかし、どのようにしても震災のために家財道具を一切失った方や家族を亡くされた方の辛さや苦しみ、悲しみを代わりに引き受けることはできないという絶対の事実を前に、泣きたくなるような無力感を覚えた。
(文責 : 稲葉秀朗)